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言語は壁 韓国DMZ滞在の6日間

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大きさ:A5サイズ 148mm(横)×210mm(縦)
ページ:16ページ

※商品内部はカラーではなく白黒となっております。

「新大久保ブーメラン」記録ページ:http://kintominami.com/exhibition/ashinokuboboomerang_indmz/

ノンフィクションパートではレポート、出品作品について、そして、最後にノンフィクションパートに入ります。

◇フィクションパート冒頭
■言葉は壁

「I can’t speak English, Korea.」と、韓国のハッチョン(北のほうのハッチョ
ン)でクレアは言った。彼女の髪は栗色で、10月の寒空によく映えて、紅
葉を見ているようだった。みなみは彼女に聞きたいことが浮かんでは消え、口を噤んでしまった。みなみは韓国語でも英語でも話し掛けたが、クレアの前ではなんの意味も持たなかった。言語の壁が…と思いながら、時に言語が無いことが、鋭い直感の為に有用であることを感じざるを得なかった。クレアの目の色は髪の色よりも薄い黄土色で、みなみの目を捉えた。クレアは何もしゃべらなかった。けれど、皺のよった皮膚に包まれ、落ち窪んだ目尻が魅力的だった。クレアの、13歳かそこらだろう年齢の息子のウーリーが近づいてきて(後で聞いたらまだ11歳だった)、おそらくロシア語でクレアに話しかけたあと、イチョウをクレアに手渡した。唯一わかるロシア語で、Здравствуйте(ズドラストヴィチェ)(こんにちはの意)と言ってみたが、クレアの近くにピタリとつき、こちらを見ない。こういう時、猫でも子供でもおんなじで、目を合わせてはダメだ。私はあなたに構わない、といった態度で、体も顔も背け、ぼんやりと目の端でウーリーの様子を眺める。ウーリーは、赤い葉とイチョウとコップをみなみに渡してきて、葉を仕分けるように英語で言った。韓国語は流暢だが、実際あまり使いたくないようだった。そして、韓国にいても、韓国語でも英語でもない言葉だけで生きるひとがいるということに、強い衝撃を受けた。

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